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年次有給休暇を弁護士が解説

年次有給休暇を弁護士が解説

1. 年次有給休暇

年次有給休暇とは

心と体の疲れを回復し、生活のゆとりを守る目的で、一定の期間続けて勤務した労働者に与えられる、賃金が減らない休暇を指します(以下、「有休」といいます。)。

2. 有休が与えられる労働者

2-1. 有休取得の条件

有休は、正社員やアルバイトといった雇用の形式に関係なく、次の条件を満たせばもらえます。

  1. 雇われた日から6ヵ月の間続けて勤務をしている
  2. 全ての労働すべき日のうち、出勤している割合が8割以上

①の「続けて勤務」は、在籍関係を基本に、実質的に労働関係が続いているかどうかを、勤務実態などを考慮して判断します。

ちなみに、②の「8割」の計算で、業務上のけがや病気により休んだ期間、育児休業や、介護休業、産前産後休業の期間は出勤したものとしてカウントします。このルールは知られていないことも多く、実際に出勤していないのだからと、欠勤とカウントしてしまう例が一定程度見られます。有休の判断では、休業の扱いに注意してください。

2-2. 年次有給休暇の強制取得義務の新設

年次有給休暇の強制取得義務の新設

日本企業の有休取得率の低さを見かねて、来年4月に労働基準法が改正され、有休取得が義務になります。
義務の内容としては、年10日以上の有休取得の権利があれば、少なくとも5日を、毎年、使用者が指定した日に、取得させねばならないのです。労働者は毎年最低5日、有休を取得するようになるのです。
とはいえ、有休を年に5日以上取得できているなら、使用者は取得日を指定する必要はありません。

3. 有休の日数

3-1. 通常(フルタイム)の労働者の場合

勤続期間 6ヶ月 1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月
以降1年
経過ごと
年次
有給休暇
付与日数
10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日 20日

取得できる有休の日数は、勤務を続けて6ヵ月を超える日から数えて、1年で1日ずつ増えていき、2年6ヵ月を超えると2日ずつ増えます。有休日数は最大で、20日まで増えます。

3-2. パート労働者の場合

パート労働者(所定労働時間が一週間あたり30時間未満かつ、所定労働日数が一週間あたり4日以下(週以外の期間を基準に労働日数が決まっている場合は決められた労働日数が年間216日以下)の方)は、その所定労働日数ごとに、次の日数が取得できます。

一週間の
労働日数
1年間の
所定
労働日数
勤続期間
6ヶ月 1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月以上
4日 169日~
216日
7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~
168日
5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~
120日
3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~
72日
1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

3-3. 取得単位

有休は、1日単位で取得されるのが普通ですが、労使協定で、年に5日まで、時間単位で取得もできます。半日単位での取得も、使用者の承諾があれば可能とされています。

4. 有休の繰越し

年度内に取得されない有休は、次年度に繰越となります。また、有休の請求権は、発生日から2年で消滅します(時効)。なお、就業規則で「有休の繰越しを認めない」という条項を定めても、取得されなかった有休の請求権は消滅しませんのでご注意ください。

5. 未消化有休の買上げ

未消化年休の買い上げについて

有休の買上げを考えている使用者の方もいらっしゃるかと思います。しかし、原則、使用者は有休を買上げられません
しかし、法定の日数を上回る有休を会社が与えているなら、上回る部分を買上げることはできるとされています。また、2年が経って時効で消滅した分や、退職で有休の請求権が消滅したときも、消滅部分を買上げられるとされています。

6. 時季変更権について

時季変更権について

労働者は、始期と終期さえ特定して請求すれば、原則、自由に有休を取得でき、休暇の理由を伝える必要はありません。一方、労働者の指定が「事業の正常な運営を妨げる」場合は、時季を変更してもらう例外とありえます。
この例外になるかどうかは、諸々の事情を個別具体的かつ客観的に判断されます。ある裁判例では、所属事業場の、事業規模や内容、担当の作業内容・性質・繁閑、代わりの人員の手配の難易、労働慣行等の諸般の事情を考慮しました。
なお、違法な時季変更が求められ、望む有休を取得できなかったことへの慰謝料支払いを命じた例があり、また、労基署から指導がくる可能性もあるので、安易な時季変更権行使は避けるのが得策です。

7. 不利益取扱い禁止

労働基準法は、有休を取得した労働者の賃金を減らしたり、その他の不利益取扱いをしない義務を定めています。
例えば、前年の稼働率が75%である者を賃金引上げ対象者とすると定めているとして、有休を取得した日を欠勤として計算する制度は無効です。また、賞与計算で欠勤として計算するのも不相当となります。

8. まとめ

以上のように、労働者の権利である有休取得は、原則自由に取得でき、有休の時季の変更には、注意しなくてはなりません。また、有休取得に対する不利益な取扱いも禁じられています。有休についてお悩みの方は、専門家である弁護士に相談ください。

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