夫の定年退職を機に離婚を進めるべきかどうか
目次
1.はじめに
夫の定年退職はそれまでの夫婦の在り方を大きく変えかねません。これまで、夫と過ごす時間は朝晩の短い時間と休日のみでしたが、定年退職後は文字通り毎日が休日です。
夫婦の関係が良ければ、子供が独立した中でようやく夫婦で二人の時間を過ごすことができるというタイミングなのでしょうが、夫婦の関係が悪ければ、特に夫がいわゆるモラハラ夫の場合は地獄の毎日のスタートとなりかねません。
一般的に夫の定年退職時は退職金の支給等も相まって夫婦の財産が最も多くなり、以後は生活費に使われ徐々に少なくなっていきます。その為、夫の定年退職は残りの人生をどのように過ごすかを考える最後のチャンスになりかねません。
2.定年退職間近の離婚のポイント
一般的な会社員・公務員家庭の場合、定年退職間近の離婚のポイントは①退職金と②自宅の二つです。
(1)退職金
文字通り退職時に支給されるものです。退職金は給与の後払い的性格が強い為、一般的には婚姻期間に対応した期間の分が財産分与の対象となります。
いまだ支給されていない場合でも、支給間近の状況であれば通常、財産分与の対象となります。また、既に支給されているのであれば、単に現預金の分与として取り扱われることとなります。
(2)自宅
多くの場合、定年退職間近の時点においては住宅ローンが完済されている、又はかなり減っているという状況かと思われます。退職金で住宅ローンの残債務を一括返済するというケースも少なくありません。もちろん、通常は、不動産の価格は年数の経過によって下がっていきますが、それでも他の財産と比べて自宅に供される不動産の価格は高額なことが殆どです。
離婚は基本的に夫婦の別居を想定しています。しかし、自宅を半分ずつ分け合って別居することは事実上困難です。その為、財産分与の対象に自宅が含まれる場合は、自宅を売却して金銭を分けるか、どちらかが自宅を取得して差額を支払うかの方法で対応せざるを得ません。
(3)「お金」か「家」か、それが問題だ。
退職金と自宅の他にも潤沢な資産がある場合はそれ程問題となり得ませんが、多くの一般家庭の場合、退職金と自宅が夫婦の共有財産の多くの割合を占めることとなります。その為、退職を含む「お金」を取得しようとすれば家を取得できず、「家」を取得しようとすれば「お金」を取得できないというジレンマに陥りかねません。
自宅に関する「持ち家」か「賃貸」かという悩みと同様、どちらが正解というわけではありません。
離婚後のご自身の生活スタイルをイメージした上で、住み慣れた自宅を取得するのが良いのか、流動性の高いお金を取得した方が良いのかについて考える必要があります。
3.定年退職を機に離婚を進めた方が良いケース
(1)夫と毎日過ごす自信が無い
結局のところ、夫が毎日家にいる状況を幸せに思えるか否かに尽きるかだと思われます。もちろん、必ずしも定年退職した夫と「こういうことがしたい」、「こういう所に出かけたい」とまで思える必要はありません。
しかし、夫が毎日自宅にいることを想像するだけで動悸が激しくなったり震えが止まらなくなったりすることがあれば要注意です。
(2)子供がいずれも独立している
お子様のいらっしゃるご夫婦の殆どがお子様の状況を理由に離婚を思い止まっておられます。しかし、お子様が独立されているのであれば、今度はお子様のことではなく、ご自身の幸せを改めて考え直すチャンスです。
(3)離婚後の生活のイメージができている
離婚成立後は相互に扶養義務が無くなります。その為、財産分与の清算が終われば、あらためて生活費等を相手に頼ることはできません。お気持ちのままに無計画に離婚を成立してしまうと、想定外に離婚後の生活が苦しくなってしまいかねません。
離婚後の収入はどうするのか、どのような自宅に住むのか等について事前に検討した上、離婚後の生活をイメージしていきましょう。
4.定年退職間近の離婚を弁護士に依頼した方が良い理由
定年退職間近の離婚の場合、財産分与の対象が多岐にわたる場合が多々あります。退職金は支給時期によって財産分与の対象となるか、対象になるとしても満額が対象になるか否かが大きな争いとなります。また、自宅不動産についても評価額をどのような方式で算定するかによって大きな差が生じかねません。
このように、財産分与は法律上の考えによって大きな差が生じる分野です。退職間近の夫婦であれば、100万円単位から場合によっては1000万円単位で結果に差がでてしまうこともあり得ます。
定年退職間近の離婚は、残りの人生をどのように過ごすかを決める人生の一大転機です。後悔の無い結果を残せるよう、一度当事務所の弁護士にご相談してみてはいかがでしょうか。
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