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1. セクシュアルハラスメントに対する問題意識の高まり

近年、セクシュアルハラスメントという言葉が特によく聞かれるようになっています。
実際、厚生労働省の調査結果によると、2019年度の都道府県労働局におけるセクシュアルハラスメントに関する相談件数は7,639件と相談全体の中で最も多くなっています。

セクシュアルハラスメントは、男性から女性に対して行われるというイメージが強いかもしれませんが、女性から男性に対する性的な嫌がらせもセクシュアルハラスメントに該当し得えます。最近では、就職活動中にセクシュアルハラスメントを受けたことがあると回答した20代の男性が21パーセントに上るとの連合の調査結果が示されているなど、男性に対するセクシュアルハラスメントも少なからず発生しています。

また、セクシュアルハラスメントに関する訴訟が大きく報道で取り上げられるなど、セクシュアルハラスメントに対する社会全体の問題意識は年々上昇してきており、企業としても深刻な問題として捉える必要性に迫られています。
そこで、本コラムでは、セクシュアルハラスメントに対してどのような法規制がなされているのかについて解説します。

2. セクシュアルハラスメントとは?

2.1. セクシュアルハラスメントの定義

まず、セクシュアルハラスメントとは具体的にどのような行為を指すのでしょうか?
この点、一般的には、セクシュアルハラスメントとは、相手方の意思に反する口頭や行動による性的な嫌がらせと理解されています。
他方で、法律上は、職場におけるセクシュアルハラスメントにつき以下のように定義されています。
「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」

2.2. セクシュアルハラスメントの類型

また、セクシュアルハラスメントは以下の2つの類型に分類されます。

  1. 対価型セクシュアルハラスメント
  2. 環境型セクシュアルハラスメント

2.2.1. 対価型セクシャルハラスメント

まず、対価型セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の拒否や抵抗といった対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けることをいいます。
厚生労働省は、以下のような場合が対価型セクシュアルハラスメントに該当するとしています。

    【対価型セクシュアルハラスメントの例】

  • 事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたた
    め、その労働者を解雇すること
  • 出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、その
    労働者について不利益な配置転換をすること
  • 営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言し
    ていたが、抗議されたため、その労働者を降格すること

2.2.2. 環境型セクシュアルハラスメント

環境型セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。
厚生労働省は、以下のような場合が環境型セクシュアルハラスメントに該当するとしています。

    【環境型セクシュアルハラスメントの例】

  • 事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、その労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること
  • 同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと
  • 事業所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと

3. セクシュアルハラスメント該当性の判断

では、セクシュアルハラスメントに当たるか否かはどのように判断されるのでしょうか?
セクシュアルハラスメントに該当性するか否かは、事案ごとの個々の事情を加味して判断されます。以下、少し詳しく説明します。

3.1. 裁判例

まず、裁判例ではどのように判断をされているかですが、過去の裁判例では、職場において、男性の上司が部下の女性に対し、その地位を利用して女性の意思に反する性的言動に出た場合には、その行為の態様、上司の職務上の地位、年齢、被害女性の年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的にみて、それが社会的見地から不相当とされる程度のものであるときは、性的自由ないし性的自己決定権等の人格権を侵害する違法な行為となると判断したものがあり、ここからも様々な事情を基にセクシュアルハラスメント該当性が判断されることが分かります。

3.2. 厚生労働省の判断基準

次に厚生労働省の考え方ですが、同省は、セクシュアルハラスメント該当性の判断につき、
実施された行為の回数に関して、以下のような基準を示しています。

たとえ一度のみの行為だとしても、相手方の意思に反する身体的接触により相手方
が強い精神的苦痛を受けた場合には、環境型セクシュアルハラスメントに該当し得
る。

継続性や反復性が要件となるものであっても回数のみではセクシュアルハラスメントの該当性を判断せず、たとえ回数が少なくとも、相手方から明確な抗議があったにもかかわらずこれを放置した場合や心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合には、環境型セクシュアルハラスメントに該当し得る。

さらに、同省は、女性が被害者である場合には、平均的な女性労働者の感じ方を、男性が被害者である場合には平均的な男性労働者の感じ方を基準としてセクシュアルハラスメントの該当性を判断することが適当であるとしています。

4. セクシュアルハラスメントに関する法的責任

では、セクシュアルハラスメントに該当する行為が行われた場合、誰がどのような法的責任に問われるのでしょうか?

4.1. 加害者の責任

まず、セクシュアルハラスメントを行った当事者は、被害者に対して不法行為を行ったとして、損害賠償責任を負うことになります。この場合の損害の中身としては、治療費、休業損害、退職による逸失利益、自殺に至った場合の逸失利益、慰謝料及び弁護士費用等が考えられます。
また、極めて悪質な行為態様によっては、刑事上の責任を負うこともありえます。

4.2. 使用者の責任

次に、自らが雇用する労働者がセクシュアルハラスメントを行った場合、使用者も使用者責任として被害者に対して損害賠償責任を負うケースもあります。
また、セクシュアルハラスメントが起きた後の使用者の対応に不備があった場合には、それを理由に損害賠償責任を負うことも考えられます。

したがって、セクシャルハラスメント問題が生じた際、軽々に単なる労働者間の個人的なトラブルであると判断することには注意を要します。

5. セクシュアルハラスメント防止策の構築義務

さいごに、法律上、事業主に課せられている、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するための雇用管理上の措置について解説します。

事業主は大きく以下の4つの措置を講じる義務を負います。

  1. 事業主の方針の明確化・周知・啓発
  2. 相談対応体制の整備
  3. 迅速・適切な事後対応
  4. ①から③と併せて講ずべき措置

以下、少し詳しくみていきます。

5.1. 事業主の方針の明確化・周知・啓発

まず、職場におけるセクシャルハラスメントについて、内容や禁止方針を明確化し、また、服務規律等を就業規則等に文書で規定し、管理・監督者を含む労働者に周知、啓発することが求められます。

5.2. 相談対応体制の整備

また、苦情を含む相談窓口を設置し、相談窓口の担当者が適切に対応できるようにすることも求められます。

5.3. 適切・迅速な事後措置

さらに、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応として、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること、被害者に対する配慮措置及び加害者に対する措置を迅速、適正に行うこと、再発防止に向けた措置を講ずることも求められます。

5.4. 併せて講ずべき措置

さいごに、上記の各措置と併せて、相談者、加害者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じて周知をすること、労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントに関し相談をしたこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨規定し、周知、啓発すること等も求められます。
なお、使用者が厚生労働大臣や都道府県労働局からの勧告を受けてもこれらの措置を講じていない場合には、企業名公表の制裁を受けることがあります。

6. さいごに

セクシャルハラスメントは近時特に問題視されることが増えてきていますが、法的な責任問題に加えて、例えば、セクシュアルハラスメント問題を起こした企業として報道等がなされることにより会社の評判が低下するといった悪影響が生じることも考えらえられ、軽視できない問題となっています。
当事務所には企業法務に特化した弁護士が在籍するため、是非セクシュアルハラスメント対策についてご相談いただければと思います。

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