合弁契約について
1. 合弁契約について
企業にはそれぞれ技術やノウハウ、販売ルート等の経営資源を有しています。複数の事業者がこうしたそれぞれの強みを生かして共同事業を行うことはよく見られるところです。合弁契約はその一形態で、複数の事業者が新しく共同事業を行うことを目的として締結される契約です。
その最大の特徴は、複数の事業者が関与することにあります。円滑に事業を運営するためには、各事業主の利害関係や意思決定の方法を事前に取り決め、契約書においてそれを適切に反映させなくてはなりません。
また、複数の事業者が関与している以上、その関係性が永続するとは限りません。そのため、合弁が終了する条件についても事前に取り決めております。
2. 一般的な合弁契約の構成
2-1. 前文
合弁に参加する会社、合弁の対象となる会社(以下「合弁会社」といいます。)、合弁の目的等を記載します。
目的は当事者の権利義務関係を定めるものではありませんが、契約書の解釈指針として機能するため明記することが望ましいでしょう。
その他にも、合弁の方法が定められます。共同出資をして新規に会社を設立する方法や既存の会社に株主として出資する方法等、合弁の方法は一つではありません。どの方法を採用するか明らかにする必要があります。
2-2. 合弁の概要
一般的には、合弁の概要として次のとおりの事項を記載します。
- 商号
- 事業目的
- 本店所在地
- 株主総会や取締役会等の設置機関について
- 発行株式数
- 事業年度
2-3. 合弁会社に対する出資比率
合弁会社を設立するに際し、参加する会社がどの程度の割合で出資するかしたかは、株主総会や役員の構成、ひいては会社の支配権に影響する重要事項です。
参加する会社の間に優劣をつけることを避け、対等な出資比率とするケースもあります。しかし、このような出資比率とすると、意思決定に際して逐一合意が必要になり、機動的な経営を阻害します。
出資比率は、合弁会社をどのように運営していくかに関わるため、慎重に考慮しなければなりません。
出資を行う場面は会社設立時に限られません。増資等を行う際も出資がされます。その際は、出資比率が維持されるよう予め規定が置かれるのが通常です。
2-4. 合弁会社の取締役・監査役
まず、合弁会社で就任する取締役の総数を定めます。そのうえで、合弁に参加する会社がそれぞれ何人の取締役を選任できる権利を持つか、代表取締役はどの会社から選任するか、監査役はどのように選任するかを定めます。
この規定によって取締役会の構成が決まり、会社運営の主導権をどの会社が握るのかが決まります。
2-5. 合弁会社の株主総会・取締役会
定足数と決議要件を協議のうえ定めます。この規定は、出資比率の低い会社にとって重要になります。
出資比率が低い会社は、決議に影響力を発揮できず、会社運営において意向を反映させることが困難になりかねません。そこで、決算の承認や予算の作成等、一定の重要事項については全株主の同意を要すると定めて対応します。
もっとも、全会一致を要求する事項が広範になりすぎると機動的な会社運営が阻害されます。そこで、全会一致が不可能な場合に備えた規定を定めます。
例えば、①決議事項に反対する会社から、合弁会社の株式を買い取る、②合弁会社を解散する等の方法が採用されます。
2-6. 合弁に参加する会社の役割
合弁にあたり、参加する会社はそれぞれの経営資源を提供することになりますが、その際、合弁会社と合弁に参加する会社との間の取引条件が定められます。取引条件は、一方に有利な条件は他方にとっては不利なものになるため注意が必要です。
また、合弁会社が借入を行うに際し、合弁に参加する会社が連帯保証を求められることがあります。通常は、内部負担の割合は出資比率に応じたものとされます。
2-7. 合弁会社の株式譲渡
合弁は、株式譲渡が行われて第三者が自由に参画できる事態は想定していません。そのため、株式譲渡を行うためには、合弁に参加する全会社の同意が条件とされます。
2-8. 合弁会社が経営不振になった場合
経営不振等で合弁を継続することが適切といえない事態も想定されます。その際に、どのように対応するかは予め定めておかねばなりません。例えば、残留する会社が離脱する会社から株式を買い取る等の方法が取られます。この場合、買取価格の算定方法についても事前に規定しておきます。
なお、すべての会社が合弁会社の存続を望まない場合、合弁会社は解散されます。
2-9. 合弁に参加する会社に違反があった場合
一般的には、⑴違反していない会社に違反した会社が保有する合弁会社の株式を安く買い取る権利を付与するか、⑵違反した会社に違反していない会社が保有する合弁会社の株式を高く買い取る義務を負わせる旨の規定が置かれます。
また、合弁に参加する会社が破産をすることもあります。この場合、⑴の方法を採用するか、合弁会社を解散するかが定められます。
2-10. 競業禁止
合弁に参加する会社がが同種の事業を新規に立ち上げたとすると、合弁会社にとって不利益となるおそれがあります。そのような事態を防止するために、一定期間は競業となる行為を行うことを禁止する旨が定められます。
2-11. 秘密保持
合弁に関する事項が第三者に伝播することを防ぐために秘密保持条項が定められます。
2-12. その他
裁判管轄等の一般的な条項が規定されます。
3. まとめ
合弁契約は記載内容や構成が複雑になる傾向にあるため、専門家によるサポートの必要性の高い契約類型といえます。弊所では、合弁に関する事案も豊富に取り扱っておりますので、ご検討の際は一度ご相談ください。