「偽装請負」に違反していないか・チェックポイントと注意点
1. 偽装請負とはどのような状態をいうのか
偽装請負という言葉は、報道等でも時々目にすることがあります。しかし、その実態は、必ずしも正確に理解されていないことが多いです。
偽装請負とは、本来であれば、
- 従業員として雇用をする
- 派遣会社から派遣を受ける
のいずれかによる必要があるにもかかわらず、請負の形態で業務を依頼している状態をいいます。
このような状態は、法律上、違反になります。そのため、偽装請負という呼ばれ方になっています。
2. なぜ偽装請負が違法になるのか
なぜ、偽装請負が違法になるかという点をご説明します。この点は、請負の法的な性質に深くかかわります。
法律上、請負は、
- 発注者から具体的な指揮命令を受けることがない
という特徴があります。他方で、雇用は、
- 雇用主から具体的な指揮命令を受ける
という正反対の特徴があります。
会社として、具体的な指揮命令を行ったうえで、業務に従事してもらう人員を確保したいのであれば、
- 従業員として雇用をする
- 派遣会社から派遣を受ける
のいずれかによる必要があります。
3. なぜ偽装請負が頻発するのか
次に、なぜ、偽装請負が頻発するかという点をご説明します。これは、派遣と直接雇用に、以下のようなデメリットがあるためです。
3-1. 派遣のデメリット
第1に、港湾・建設・警備・病院は、そもそも、派遣が禁止されています。
第2に、派遣が認められている場合であっても、原則として、上限3年間の期間制限があります。
第3に、派遣が認められている場合であっても、受入先の会社には、法律上、各種の義務が課せられています。
3-2. 直接雇用のデメリット
第1に、会社に、従業員の社会保険に関する費用負担が発生します。
第2に、会社が、従業員に関する労働安全衛生の責任を負います。
第3に、仮に、契約社員の形式で雇用したとしても、法律上、期間満了による雇止めが制限されているため、実質的に、無期限の雇用になってしまうリスクがあります。
このような理由から、請負という形をとりつつ、具体的な指揮命令を行うことで、偽装請負が頻発しています。
なお、よく誤解される点ですが、請負という呼び方を避けて、業務委託という呼び方にしたとしても、偽装請負に該当することは変わりません。言い換えますと、「偽装請負」と「偽装業務委託」は、同じ点が問題になるといえます。
4. 偽装請負になるとどのようなデメリットがあるのか
偽装請負に該当すると、会社は、法律違反による罰則の適用を受けることになりますが、もっとも影響が大きいのは、「偽装請負・偽装業務委託の相手方が希望すれば、会社は、直接雇用に切り替えなければならない」という点です。
自動的に直接雇用が生じるわけではありませんが、相手方が希望すれば、直接雇用になってしまいますので、会社にとって、もっとも注意すべき点です。
5. 偽装請負に該当するか否かの基準
偽装請負に該当するか否かは、上記のとおり、
- 発注者から具体的な指揮命令を受けているか否か
が最も重要なポイントになります。
この点は、厚生労働省のこちらのページに記載されているような、個別の事情を総合的に考慮したうえで、判断されます。
個別の事案に即して、説明がなされていますが、究極的には、「具体的な指揮命令を受けているか否か」で決まります。
6. まとめ
現在の法律は、全体的に、無期限の直接雇用にシフトさせようとする考え方に立っています。これは、「労働力の使い捨て」を回避しようとする動きと言い換えることもできます。そのため、偽装請負だけでなく、契約社員の雇止め・派遣切りといった点も、それぞれに規制がなされています。
偽装請負の問題を理解するためには、この基本的な視点を理解しておく必要があります。
偽装請負は、あくまでも、そのような流れの中にある1つの問題点にすぎません。対応については、このような法律の全体的な理解が必要ですので、当分野に強い弊所へご相談ください。