同一(価値)労働同一賃金は使用者に何を求めるか
1. 同一(価値)労働同一賃金原則
この原則に関して、厚労省が出したガイドライン案(H28.12.20)は、俗にいう正規雇用と非正規雇用の労働者間に不合理な待遇格差をなくすための原則としております。 つまり、労働条件に、正規と非正規の違いを持ち込むのを防ぐものです。上記のガイドライン案では、正規・非正規間の待遇格差のうち、どのようなものは不合理になるのかが示されております。
2. 2. 問題となる場面
同一「賃金」とはいいますが、この原則は、様々な手当・福利厚生など、労働におけるあらゆる待遇に関する問題です。
平成30年6月1日には、正規社員にのみ支給されていた様々な手当に関して、非正規社員が相当額の支払いを求めた事件が、最高裁判所で扱われました。
また、正規と非正規間での待遇格差であれば、この原則の問題ですので、正規雇用の人と非正規雇用の人を比べた格差のみならず、正規雇用であったときと、非正規雇用になってからの同じ人の格差もこの問題に含まれます。
定年まで正規労働者だった方が、定年後は非正規労働者で再雇用され、定年前から待遇が変わってしまった場合に、その待遇の差が不合理か、というのが一例です。
なお、同一の雇用形態(正規雇用同士や非正規雇用同士など)での差は、また別の問題です。
3. 違反した場合
この原則を定めた法規程の代表例には、労働契約法20条があります。
同条は、同じ使用者の下で働く、有期労働者と無期労働者の労働条件が異なる場合、その差が不合理と認められるものではならない旨を定めます。
違反すると、不合理な差の原因となる部分の労働条件が無効となります。すなわち、違反している就業規則の規定や、雇用契約書の規定は無効となるのです。
さらに、不合理な差を設けた扱いには、使用者の過失があるとして、使用者が労働者に、不合理部分による損害を賠償することになる可能性があります。
4. 問題の例
ある会社は、乗務員としての従業員の中で、正社員のみには1か月間無事故で勤務すれば1万円の手当を支給しますが、無事故であっても契約社員には不支給でした。
これは、実際に最高裁判所で争われた事例です。最高裁判所は、手当の目的は優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼獲得であって、職務内容が同じなら、契約期間の違いにかかわらず、いずれも等しく安全運転や事故防止の必要性がある以上、手当の支給の格差は不合理としました。
正規雇用と非正規雇用の間で、手当などに違いを作る場合は、雇用形態の違いが手当の支給を左右することを合理的に説明できるかという検討が大切です。