副業・兼業をわかりやすく整理してみました
副業・兼業という言葉をお聞きになった方の中には、長らく、長時間勤務により、会社の業務を疎かにするものである、情報漏洩の危険性があるなど、あまり良いイメージを持たれていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、政府による「働き方改革」において、副業や兼業の推進をしていることもあり、近日では、副業や兼業を認める判断をする会社も徐々に増えてきているのも事実です。
この記事では、副業・兼業についての副業・兼業についてのメリット・デメリット及び法令上の問題を確認いただいた上で、改めて副業・兼業について振り返る機会としていただければと思います。
1. 副業・兼業について
まず、副業や兼業とは何かという点ですが、法律上、明確な定義はありません。
一般には、副業と兼業を厳密に区別せず、本業とは別に収入を得ている仕事がある場合を指すことが多いかと思います。
2. 副業・兼業の法令上の問題点
2-1. 基本的な考え方
副業・兼業は、法令上明確に禁止されているわけではありません。
裁判例のなかには、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であり、制限をする場合には、会社の利益が害されるような場合に限定される旨判断したものがあります。
2-2. メリット・デメリット
会社にとって、一般的には、以下のメリット・デメリットが挙げられます。
2-2-1. メリット
- 社内では得られない知識・スキルを獲得できる
- 副業・兼業を許容する仕組み自体に、優秀な人材の獲得・流出防止効果がある
- 従業員の人脈、情報等により、事業機会の拡大のチャンスが広がる
2-2-2. デメリット
- 就業時間の管理、把握が困難になりうること
- 従業員の健康を害する可能性があること
- 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務、安全配慮義務などの義務に違反し、会社の利益を害する可能性があること
2-3. 法令上の問題点
以下では、法令上の問題点を取り上げますが、詳しくは他の記事を参照し、より詳しい知識を得ていただければと思います。
2-3-1. 職務専念義務違反
ここでいう職務専念義務とは、特に民間企業における労働契約に付随するものを取り上げます。
本来ですと、労働者は、労働契約に基づく労務を提供すれば足りますので、その余の時間等は、自由であるのですが、労働時間外の副業・兼業が、本来の業務に支障をきたす場合には、職務専念義務違反となる可能性があります。
ただ、業務に支障をきたす可能性があれば足りるのかは、事例ごとに異なるため、安易に自己だけで判断することは危険であり、弁護士に相談すべきです。
2-3-2. 秘密保持義務
特に技術職の従業員の副業・兼業において、意図的であるかどうかを問わず、会社の秘密情報漏洩を気にする経営者は、比較的多いのではないでしょうか。
情報の価値が高い現代においては、この点は、副業・兼業のみならず、一般的に問題となる点かと思います。
2-3-3. 競業避止義務
本業で得た知識、経験を活かし、本業と同種の副業・兼業がなされる場合は一定数存在するでしょう。2-3-2の秘密保持義務も同時に問題となるケースもあるでしょう。
ただ、競業菱義務違反に該当するかどうかは、一律に判断できるものではなく、類似の裁判例等も検討の上、事例ごとに判断する必要があります。
2-3-4. 安全配慮義務
2-3-1とも関係してきますが、労働時間外の副業・兼業において長時間労働がなされ、病気を発症した、あるいは負傷したなどの場合、安全配慮義務を負う可能性があります。
これは、副業・兼業の実態を会社側が認識している、あるいは認識が容易に可能であったケースで起こり得ます。
2-4. 上記問題点への対策
2-4-1. 就業規則の規定で対応する
多くの会社は、就業規則にて副業・兼業を原則として禁止し、例外的に認めるといった対処を取ることが多いかと思います。会社として、副業・兼業に積極的でない会社は、このような対応が基本になろうかと思います。
また、副業・兼業を許容した場合でも、副業・兼業が原因の一つとなり、従業員の健康が害された場合、速やかに副業・兼業の許可を取り消す、あるいは本業の時間外労働時間等を削減するなどの措置を取ることで、安全配慮義務に問われるリスクを減らすことに繋がります。
いかなる手段を取るべきかについては、最終的には事例ごとに判断する必要がありますので、弁護士に相談されるべきかと思います。
2-4-2. 誓約書等を締結する
副業・兼業を認める場合、紛争を未然に防ぐために、秘密保持、競業避止義務などにつき、書面の形で合意書を締結すべきかと思います。
ただ、副業・兼業の内容、事情等は、人それぞれとなります。厳格すぎる合意を締結したばかりに、裁判にて、無効と判断されたケースも少なくありません。いかなる合意を結ぶのか、各人の事情をどのように反映するのかなどについては、弁護士に相談されるべきかと思います。
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