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雇止めに対する規制について弁護士が解説

有期雇用契約と雇止め

1.1. 有期雇用契約とは

まず、雇止めについて説明する前に、その前提となる有期雇用契約について説明します。

雇用契約には、雇用期間を無期とする場合(無期雇用契約)と一定の期間とする場合(有期雇用契約)とがあります。有期雇用契約は、一般的には、日雇い労働者、アルバイト、パートタイム従業員や契約社員などと呼ばれたりすることがありますが、いずれも雇用契約期間が定められている場合には、法的には有期雇用契約に分類されることとなります。

有期雇用契約の特徴は、予め合意された雇用期間満了時に雇用契約が自働的に終了するところにあります。また、期間満了後も継続雇用をしたい労働者との関係では、有期雇用契約を更新することも可能です。

1.2. 雇止めとは

そして、雇止めとは、使用者が有期雇用契約の更新を拒絶し、期間満了により契約が終了することをいいます。

1.3.雇止めの抱える問題

有期雇用契約は、労働者の臨時的需要の充足や雇用調整のために使い勝手が良く、多くの企業により採用されていますが、一定期間有期雇用契約が更新された後に、突然、雇止めがされると労働者の立場が不安定になるという問題を抱えています。

このような雇止めに関するトラブルの防止や解決を図るために、法律上、様々な規制が設けられています。

そこで、本コラムでは雇止めに対する規制について解説をします。

2.雇止めに対する手続き規制

厚生労働大臣は、法律に基づき告示として「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を出しています。同基準に定められている雇止めに関する手続き的な規制は以下の3点となります。

  1. 有期雇用契約締結時の明示事項等
  2. 雇止めの予告
  3. 雇止めの理由の明示

以下、それぞれの規制内容について詳しくみていきます。

2.1. 有期雇用契約締結時の明示事項等

有期雇用契約締結時に明示をしなければならない事項がいくつかあります。

2.1.1. 更新の有無

まず、使用者は有期雇用契約を締結するに際し、労働者に対して、期間の満了後の更新の有無について明示をしなければなりません。

厚生労働省が挙げる更新の有無の明示例は、以下のとおりです。

  • 自働的に更新する
  • 更新する場合があり得る
  • 契約の更新はしない など
2.1.2. 判断基準

また、更新する場合がある旨を明示した場合には、更新をする場合又はしない場合の判断基準も明示しなければなりません。

厚生労働省が挙げる判断基準の明示例は、以下のとおりです。

  • 契約期間満了時の業務量により判断する
  • 労働者の勤務成績、態度により判断する
  • 労働者の能力により判断する
  • 会社の経営状況により判断する
  • 従事している業務の進捗状況により判断する など

なお、これらの事項については、事後の紛争等を防ぐために書面により明示されることが望ましいとされています。

2.2. 雇止めの予告

次に、使用者は、予め更新しない旨が明示されておらず、かつ、以下のいずれかに該当する有期雇用契約につき雇止めをする場合、少なくとも契約期間の満了する日の30日前までに予告をしなければならないとされています。

  • 有期雇用契約が3回以上更新されている場合
  • 1年以下の契約期間の雇用契約が更新、又は反復更新され、最初に雇用契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
  • 1年を超える契約期間の雇用契約を締結している場合

2.3. 雇止めの理由の明示

また、雇止めの予告が必要な場合において、使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由についての証明書を請求した時は、遅滞なくこれを交付しなければいけません。

雇止め後に労働者から証明書を請求された場合も同様に遅滞なくこれを交付する必要があります。

厚生労働省は、雇止めの理由につき、契約期間の満了とは別の理由とする必要があるとしつつ、その例として以下の理由を紹介しています。

  • 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
  • 契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため
  • 担当していた業務が終了・中止したため
  • 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
  • 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため など

2.4. 違反した場合

上記の有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準に定められた規制に違反した場合についての罰則規程は特に定められていませんが、労働基準監督署において遵守のための指導が行われる可能性があります。

3.雇止めが認められない場合

また、以上のような手続を踏んでいたとしても、法律上、一定の場合には、雇止めが認められません。

具体的には、以下のいずれかに該当する場合で、当該有期雇用契約の雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には雇止めが認められず、従前と同様の労働条件で有期雇用契約が更新されることとなります。

  1. 過去に反復更新された契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できるもの
  2. 労働者において、契約期間満了時に契約が更新されると期待することにつき合理的な理由があるもの

3.1. 過去に反復更新された契約で、その雇止めが無期雇用契約の解雇と社会通念上同視できるもの

過去に反復更新された契約で、その雇止めが無期雇用契約の解雇と社会通念上同視できるものかの判断については、後半の要件が特に重要となります。

雇止めが無期雇用契約の解雇と社会通念上同視できるか否かは、雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間の管理状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などを総合考慮して判断します。

無期雇用契約と同視できると判断されたケースとしては、業務内容が無期雇用契約を締結している者と同一で、有期雇用契約の更新が相当期間繰り返されていることに加え、契約更新手続が形骸化していたものが挙げられます。

一方で、約30年もの長期間に渡り雇用契約が更新されていた事案ではあったものの、契約期間が満了する度に、雇用契約を締結しなおすことにより雇用契約を更新してきた事案では、無期雇用契約と同視することはできないと判断されています。

そのため、無期雇用契約の解雇と社会通念上同視されないためには、有期雇用契約による労働者と無期雇用契約による労働者との業務内容を差別化すること、及び、契約を更新する際に手続きを形骸化させないことが重要となってきます。

3.2. 労働者において、契約期間満了時に契約が更新されると期待することにつき合理的な理由があるもの

次に、労働者において、契約期間満了時に契約が更新されると期待することにつき合理的な理由があるかどうかについても、同様に、雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などを総合的に勘案の上、判断がなされることになります。

過去の裁判例においては、契約の更新回数が多く、かつ、契約更新の際の手続きが形骸化しているような事例や契約更新を期待されるような事情が存在する場合に、この条件に該当すると判断されることが多い傾向にあります。

したがって、この条件に該当しないようにするためには、雇用契約期間中の言動に注意をする必要や契約の更新時の手続きを形骸化させない等などの対応が重要となってきます。

なお、一度労働者が契約更新に対する合理的な期待を抱いた以上、契約期間の満了前に使用者が一方的に更新年数や更新回数の上限などについて宣言をしたとしても、このことのみをもって契約更新への合理的な期待が消滅するものではないと解されています。

4.有期雇用契約の無期雇用契約への転換制度について

最後に、会社が雇止めをしなくても、自動的に有期労働契約が無期労働契約に転換してしまう場合があります。

この制度は、有期雇用契約の更新が繰り返されその通算期間が5年を超えた場合に、労働者が申し込みをすることにより、有期雇用契約が無期雇用契約に転換されるものです。

無期雇用契約への転換は使用者の意思とは無関係になされるもので、労働者が希望する以上、使用者が無期雇用契約への転換に反対をしてもこれを阻止することはできません。

そのため、雇止めに対する対策を怠り、雇止めが制限されてしまうと、最終的には、会社が望まない従業員と無期労働契約が成立してしまうことになりますので、注意が必要です。

なお、有期雇用契約の無期雇用契約への転換制度については、別途「有期雇用契約の無期労働契約への転換制度について弁護士が解説」というコラムで詳しく解説をしていますので、よろしければご覧ください。

5.さいごに

以上のように、雇止めにも一定の制限が存在し、雇止めを有効とするためには、労働者の雇入れの段階から更新手続きまで適切な対応が必要となります。また、有期雇用契約の無期雇用契約への転換制度もあり、有期労働者の管理については、その分野に強い弁護士に相談することが重要となります。

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