賃金の払い方に関する法律の規制
1. 賃金の払い方に関する法律の規制
賃金の払い方は、通貨で、労働者に直接、全額を、毎月最低一回、一定の日に、と労働基準法24条が定めています。
賃金の払い方にも、規制がありますので、雇い主はその規制を十分理解しておかねばなりません。
2. 通貨払い原則
原則、賃金は通貨にて払うという義務です。その意味は、賃金を、物品や小切手を渡すなどの方法でなく、現金で払うこと、外国のものでなく日本の通貨で払うことの二つが含まれます。
ただし、例外として、労働者指定の本人名義の銀行口座に振込む形で、労働者に同意をもらった場合は、現金の手渡しでなくても、問題はありません。
3. 直接払い原則
賃金は、労働者に直接払うという義務です。賃金は労働者である本人に払うのであり、第三者に払うのを禁じています。その目的は、いわゆる「ピンハネ」や受け取る権利のない人への支払を防止して、本人へ正当かつ確実に賃金が払われる状態を守ることです。
この規制は厳格で、使用者が未成年労働者の賃金を両親に払う形式も労働基準法59条で禁止です。また、労働者が他人に、給料を受け取る権利を売り渡した場合でも、使用者はあくまで本人に賃金を払わなければならず、債権の譲受人に払うことは許されません。
ただし、裁判所から使用者に、給料債権が差し押さえられたという内容の通知が届いた場合は、例外的に、賃金の4分の1相当額を、差押えた人に払うことになります。
4. 全額払い原則
賃金は、全額を払うという義務です。
賃金に関するトラブルは、本原則関連のものが最も多いです。給料を「天引き」して、残りを支払っていた、という事例は枚挙にいとまがありません。
お金を労働者に貸していたり、労働者の過失で会社に損失が出た場合に、相殺として給料を天引きして回収をしようと考える使用者は多いです。たしかに、これらの場合、使用者は労働者にお金を請求する権利を持ってはいます。
しかし、この場合も天引きは本原則違反となります。使用者が債権を持っていても、それを賃金の天引という形で回収するのは違法となるので気を付けなければなりません。
一方で、欠勤や遅刻といった労働者の勤務状況に関わる事情のために、賃金を減らして支給する、という払い方は、本原則に違反しません。このような事情による減額の場合には、給料が減らされ、労働者に減った分の賃金を受け取る権利がそもそも発生していません。これは賃金を受け取る権利が生じたのに支払われない、という天引きとは全く別の扱いになるのです。
5. 毎月一回以上一定期日払い原則
賃金は、毎月最低一回、決まった日に払うという義務です。目的は労働者の生活を安定させることです。
決まった日について、例えば「毎月第●月曜日」などの決め方は、月によって支払いの時期が大きくずれる可能性があるので、(パート労働者は別として)認められないと考えられます。
なお、賞与や手当の種類次第では、1ヶ月を超える期間ごとの支払としても、この原則の例外として認められます。