消費者契約法について
1. はじめに
消費者契約法は、いわゆるBtoCの事業に適用されます。
不特定多数の個人を相手にする事業を行っている場合には、特に問題になることが多い法律です。
そのため、BtoCの事業を行う際は、消費者契約法の正確な理解が必要になります。
消費者契約法は、いわゆるクーリングオフ制度とは異なります。
クーリングオフ制度は、特定商取引法という別の法律で定められています。
2. 取消が認められる場合
消費者契約法は、個人の消費者を保護するための法律ではありますが、どのような場合でも、すでに行ってしまった取引を取り消すことができるわけではありません。
消費者保護法が適用されるのは、事業者側が、一定のルール違反を行った場合のみです。
言い換えますと、事業者側が、個人の消費者に商品を販売するにあたり、適正に情報提供などを行っていたような場合には、消費者契約法の適用はありません。
消費者契約法が適用される典型的なケースは、以下のとおりです。
・ 事業者側が、重要な点について、事実と異なる内容を伝えた場合
不動産の売買であれば、実際の築年数よりも少ない年数を伝えるようなケースが該当します。
・ 将来の価格などの不確実な事項について、確実であるかのような断定的な伝え方をした場合
不動産の売買であれば、投資用不動産の売買にあたり、「数年後に必ず値上がりする」という説明をするようなケースが該当します。
・ 重要な事実のうち一部のみを伝えて、消費者にとって不利益になる事実を伝えなかった場合
不動産の売買であれば、近い将来において、隣地に廃棄物処理施設が建設される予定があるにもかかわらず、それを伝えずに居住用の不動産を売却するようなケースが該当します。
これら以外にも、
- お願いしたのに帰ってくれなかったケース(不退去)
- 帰りたいのに帰らせてくれなかったケース(退去妨害)
- 通常の量を著しく超える物の購入を勧誘されたケース(過量契約)
- 不安をあおる告知のケース(いわゆる「就活商法」)
- 恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用のケース(いわゆる「デート商法」)
等も禁止されています。
このようなケースでは、消費者が、上記のような問題を認識した時点から1年以内(但し、契約の締結から5年以内に限ります)であれば、消費者側から契約を解除することができます。
3. 無効になる場合
また、事業者側と消費者の契約書が締結されている場合でも、以下のような条項は、消費者に不利であるため、無効になるリスクが高くなります。
・ 「当社はいかなる場合であっても一切の賠償責任を負わないものとします」
・ 「当社に故意・重過失がある場合における賠償責任は、XX円を限度とします」
・ 「いかなる場合であっても、契約後のキャンセル等は、一切できないものとします」
・ 「お客様に損害賠償責任が発生する場合の遅延損害金は、年30%とします」(=年14.6%を超える遅延損害金を設定する場合が禁止されます)
・ 「お客様が契約をキャンセルする場合の違約金は、YY円とします」(=契約解除による平均的な損害額を超える違約金の設定が禁止されます)
4. まとめ
BtoCビジネスを行う事業者様にとって、このような違反がありますと、コンプライアンス体制に問題があるということになり、事業の適正さに疑義が生じ得ます。また、ビジネスの風評にも関わることがあります。
そのため、BtoCビジネスを行う事業者様にとって、消費者契約法の正確な理解は、重要になってまいります。