立替払いをしたにもかかわらず、立替金の支払に応じない相手方から債権の全額回収に成功した事例
相談内容
相談者は旅行代理店に勤務している。
グループの代表である顧客Aから電話や窓口訪問によって、継続して複数回にわたり、顧客Aが(グループで)企画する各種旅行の手配を依頼されていた。
しかし、顧客Aは途中からその旅費等の支払いを怠るようになった。
支払われない旅費等に関しては、債務者に代わって相談者が旅行代理店に立替払をすることとなり、その額は数百万円にも及んだ。
その一方で、顧客Aは「立替払契約を結んだ覚えはなく、例え債務を負っていたとしても自分個人との契約ではなく、会社との契約である」と主張した。
しかしながら、その会社からも回収できる見込みは薄い状況であった。
なお、これら一連のやり取りにおいて、相手方の署名のある契約書等の書類は一切作成しておらず、証拠は相談者が手書きで記入していた見積書や請求書のみであった。
争点
①明示もしくは黙示の立替払契約は成立していたのか。
②債務者は代表個人か法人か。
解決内容
相談者が請求した金額の99%の債権が存在するという勝訴判決を取得した。
判決の取得後、相手方が任意に債務を履行しなかった為、強制執行手続を申立したところ、債務者が現金(判決での確定額に遅延損害金を加えた額)を一括にて持参することとなり、全額回収できた。
弁護士の所感
契約書等の重要な証拠が存在しないことにより、紛争になるケースは非常に多いです。
また、当事者の関与による証拠しかなく、相手方が作成に関与した証拠が存在しない場合も、契約成立を立証することは困難なことが多いです。
本件も同様に証拠がないケースでしたが、相談者が継続して作成していた手書きの控えや請求書が大量に存在していたことが立証において大変重要でした。
加えて判決を取得しても相手方が任意に債務を履行しなかった場合、強制執行手続を申し立てるしかなく、しかも相手方が財産を持っていなければ強制執行すらできません。本件においては、債務者が不動産を所有していた為、無事に全額回収という結果をもたらすことができた点が非常に有意義でした。