金銭の貸主が借主に対し、貸金返還を求めて訴訟提起したところ、そのほとんどを回収することに成功した事例
賃金・残業代介護業
相談内容
XはYに対し、借用書を主たる証拠として貸金の返還を請求した。同借用書は表面の続きが裏面に印字された1枚で構成されていたところ、Yは署名した裏面こそ確認した経緯があるものの、表面は何ら確認した経緯はなく、XがYの署名をとってから印刷をかけたものであるとして、同借用書の成立そのものを争った。
争点
借用書が真正に成立したものといえるか。
解決内容
借用書が真正に成立したことを前提に、X社はYから貸金の9割を現実に回収する内容の訴訟上の和解が成立した。
弁護士の所感
本件は、表裏一体となった借用書が真正に成立したものであるかが争点となった興味深い案件でした。
通常であれば、表裏一体となっている以上、複数枚に及んだ借用書の場合よりもむしろ争いになりにくいと考えられますが、本件のように「片面は後から印字されたものである」との主張は、現実の紛争において予想されるところです。
もっとも、片面だけでは意味をなさない書類になってしまい、署名した者が一体、何に向けた意思表示をしたものであるか説明がつかないことも多く、「片面を後で印字したもの」との主張は筋が通らず、排斥されやすいと思われます。
とはいえ、借用書等の契約書を作成するにあたっては、後で改ざんされたものである等の主張をされないよう、十分注意する必要があります。