解決事例5
相談内容
従業員が別法人を設立して、自社と同内容の業務を行おうとしていることが発覚しました。
調査を進めてみると、単に別法人を設立して自社と同内容の業務を行おうとしているのみならず、自社の顧客情報を利用して営業活動を行い、実際に売上をあげていることが判明いたしました。
そこで、クライアントから当事務所宛に、この従業員の処遇と損害賠償請求の御相談をいただくことになりました。
争点
争点は、その従業員が債務不履行責任を負うか否かと損害賠償額がいくらになるか、の2点になります。
しかしいずれも、事前の調査活動により、相当程度の証拠資料を集めることができていたため、もっとも懸念されていた点は、その従業員が自らの責任を認め、損害賠償請求に応じるか否か、という点にありました。
解決内容
勤務時間中に従業員の勤務地に弁護士が赴き、その従業員に対して説諭したところ、その従業員は自らの責任を認め、損害賠償請求にも応じる意向を示したため、その場で合意書を作成し、調印手続を行いました。
合意内容にしたがって、後日その従業員から賠償金も振り込まれました。
なお、その合意内容には、退職後も一定の競業避止義務を負う旨の条項を入れることに成功しています。
弁護士の所感
競業避止義務の問題は、労使間の紛争で頻繁に争われる紛争類型の一つです。
労働者は、会社に在籍中は、当該労働者の地位の高低にかかわらず、競業避止義務を負っているのが原則ですが、退職後は当然に競業避止義務を負うわけではありません。
そのため、事前に就業規則等に退職後の競業避止義務を規定しておく必要があります。
仮に就業規則等に明確に規定されていないのであれば、退職時までに別途合意書や誓約書を取り交わしておくべきです。
明確な合意が労使間で存在しなかった場合には、例外はありますが(最判平成22年3月25日民集64巻2号562頁)、当該労働者は退職後は競業避止義務を負わないと判断されることが多いです。
もしこのページをご覧になった方の中で、自社の就業規則の見直しをお考えになっている方や、問題行動を引き起こす従業員の処遇を考えている方、退職した従業員への損害賠償請求で悩んでいる方がいらっしゃいましたら、一度当事務所までご相談にお越しください。