休職明けの現場復帰をめぐる調停事件
介護業ハラスメント労務問題
相談内容
介護施設を運営するA社で「事務職」として働いている従業員Bは、出産を機に2年間の育児休業をとっていた。そして期間満了後、従来の事務職に復職を希望したのであるが、その時点ですでに事務職の人員が過剰であったため、A社は、「介護職への異動を前提とした復職を検討してくれないか」とBにもちかけた。
Bはこれを不服に思い、このようなA社の打診は「育児休業を理由とする異動命令」であってマタニティハラスメント(通称マタハラ)にあたるとして、A社に対して逸失利益および慰謝料として数百万円を求める旨の調停を、労働局に申し立てた。
争点
(1)そもそもA社の打診は異動命令にあたるか
(2)Bへの異動命令がマタハラに該当するか
解決内容
A社がBに50万円支払うという旨の調停が成立した。
弁護士の所感
本件調停は、育児介護休業法に基づく手続きでした。
本来、復職を希望する者に対しては、従前の部署に復帰させることが最も望ましいのですが、休業期間が長期間にわたる場合、その間で各部署の人員配置の状況に変化が生じることが通常であり、それゆえ従前の部署に戻すことが困難とされる場合がよく見受けられます。本件も、まさにそのような事案でした。
もっとも、本件は「育児休業」という点が非常に重要であり、とりわけ育児休業明けの復職は常にマタハラにあたらないか否かが争点となるため、使用者は復職後の配置や待遇について万全の注意を払う必要があるとされています。