人材紹介の会社から紹介された求職者について、一旦は人材紹介の会社に不採用を通知した。その後、人材紹介の会社を通さず求職者に対し直接インターンシップを案内する連絡をしたところ、人材紹介の会社から規約違反として違約金の請求を受けた事例
相談内容
相談者A社は、人材採用のために人材紹介の会社B社に人材紹介を依頼した。
その後、A社は、B社より求職者としてCを紹介された。
そのため、A社はCの面接を行ったところ、Cの募集業務に関する実務経験の少なさから仕事を任せることに不安があるとして、B社に対してCについて不採用とする旨の連絡をした。
しかし、A社は面接時のCの仕事への意欲の高さに関心を持っていたことから、B社への不採用の連絡後にCに直接連絡をして、インターンシップを提案した。
その事実を知ったB社は、人材紹介規約の「B社から人材の紹介を受けた者が、B社を介さず求職者に連絡をした場合、違約金として求職者に支払われる予定の給与1年分相当額をB社に支払わなければならない」という約定に基づいて、A社に対して違約金を請求した。
争点
A社はB社に対して、人材紹介規約の違反による違約金の支払義務を負うか。
解決内容
B社との交渉により、請求を受けていた違約金から減額した内容での和解が成立した。
弁護士の所感
契約は、その内容が公の秩序又は善良の風俗(公序良俗)に反する場合であったり、
強行法規と呼ばれる法令に反しない限り原則として当事者間で自由に取り決めることができ、これを契約自由の原則といいます。
本件に関しては、1年分の給与相当額の違約金が、社会的相当性を欠く程度に高額に値しなければ、同原則からも契約は有効となります。人材紹介というビジネスが、人材を紹介して実際に雇用契約が成立した場合に初めて報酬を得られるという成功報酬体系のビジネスモデルで成り立っていることからも、人材紹介の会社を通さず行う採用行為を規約違反として禁じることは十分に合理性があるといえます。
よって、本件について給与1年分相当額を違約金としても、社会的相当性を欠き無効であるといえるほどの高額には値しないと解せます。
このように、本件に限らず契約書や規約などを締結する際には、締結前に、弁護士などの専門家に違約金等の制裁事項を確認してもらうことが予防法務の観点からも大切です。