会社役員の間で貸金の返還をめぐり紛争になっていたところ、その紛争が会社の代表権の存否にまで発展したことから、これらを一挙に解決した事例
介護業会社法
相談内容
Aは相談者X社の代表取締役であり、YはX社の元代表取締役であった。X社はYに対して貸金債権を有していたものの、Yが任意に貸金を返還しないことからX社は訴訟提起に踏み切った。
ところが、X社がいざ訴訟提起をすると、Yは「自分がX社の代表を辞した経緯はなく、X社の訴訟提起は代表権なきAによるものであり、却下されるべきである」と争った。
争点
X社の代表権はAかYのいずれに帰属するか。
解決内容
X社はYから貸金の9割を現実に回収するとともに、①X社の代表権はAが有すること、②YにX社の代表権がないことを確認する内容で、訴訟上の和解が成立した。
弁護士の所感
会社が当事者となって訴訟提起する場合、当然のことながらその会社の代表権を有する者により訴訟提起でなければ、同訴訟は審理をする前提条件を欠き、訴えは却下(門前払いに)されてしまいます。
本件はもともと貸金の返還をめぐるトラブルであったものの、相手方が代表権の存在を争ってきたことから、訴訟提起そのものが有効なのかという問題に発展しました。
実務において、代表権の存否が争いになることは珍しいことではなく、その際には株主総会招集通知や株主総会議事録がしっかりと作成・保管されているかが極めて重要になります。登記に必要である場合には作成されているものの、それ以外の場合には作成・保管されていないという現状が散見されることから注意を要します。