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自営業を経営する相談者が、反復継続して個人から貸付を受け、そ の合計額が500万円以上に及んでいたものの、同貸付にあたり、借用書記載 の金額から月利30%に相当する額が天引きされた残額のみ金銭交付を受けて いたという事情があるなかで、貸付けから5年以上経過してから貸付金の返還 請求訴訟を提起された事例

賃金・残業代労務問題その他の業務

相談内容

自営業を営むXは、その自営にかかる事業運転資金に窮していたことから、反復継続してAから金銭の貸付けを受けていた。その貸付けの中には、Xだけでなく、Yを主債務者としたり、Zら複数の者を保証人とするものも含まれており、借用書上の貸付け合計額は優に500万円を超えていた。その他、特筆すべき事情として以下の事情が存在した。

(1)全ての貸付けに借用書が存在するものの、XらはAから借用書の交付を受けていなかった。また、裁判においてもその原本がAから提出されることはなかった。

(2)Xらは随時一部返済をしていたものの、Aから領収書等を発行されることは一切なかった。

(3)全ての貸付けにあたり、XらはAから借用書記載の金額から月利30%に相当する額が天引きされた残額のみ金銭交付を受けていた。そのため借用書記載の金額を受領した経緯は一度もなかった。

XらがAに対し最後に返済をしてから5年以上が経過したのち、AはXらに対し、貸金返還請求訴訟を提起した。
そこで、当事務所がXらを代理して、同訴訟に対応することとなった。

                   

争点

①Aの貸付内容は公序良俗に反し無効となるか。
②Aの貸金返還請求権は時効により消滅しているか。

                   

解決内容

                   

Xが20万円、Yが10万円をそれぞれAに支払う内容で訴訟上の和解が成立。

                   

弁護士の所感

                   

本件は、借用書に利息の記載こそ存在しないものの、相談者(Xら)の言い分によれば、月利30%に相当する利息を前払いであるとして天引きされた上で、その残額のみ交付を受けていたということでした。

この点につき直接の証拠はないものの、借用書の額は39万円、78万円、390万円等の記載になっており、確かにそれぞれ30万円、60万円、300万円の3割に相当する額が上乗せされている額でした。
例えば、39万円という端数の額を借りることは多少の不自然さがあり、かつ、そのような不自然な額が継続していることは、常に月利30%の利息分が貸付段階で天引きされていたという相談者の言い分が正しいものであることを推認させました。
 
もし、この言い分が認められれば月利30%という利息は公序良俗に違反する暴利といえ、契約全体を無効とすることができます。
 
また、本件においては、相談者が最後に返済をしてから5年以上が経過した後に訴訟提起されたものであることから、5年の商事消滅時効が完成しているとの主張もしました。本件貸付がいずれも相談者の事業資金工面のためであったというのがその理由です。

判決となった場合、公序良俗違反、消滅時効いずれかは認められる可能性が高い事案ではありましたが、保証人も複数存在したおり、求償関係等複雑な問題も残ることから、最終的には和解で終結させることとなりました。
もっとも、当初請求額の90%以上を減額させる内容での和解でしたので、いい解決となったといえます。

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