逝去した元取締役に対する役員退職慰労金の支給義務に関する相談を受けた事例
サービス業その他
相談内容
依頼者の会社において、取締役が急逝した。急逝後に会社が調査をしたところ、この取締役について、在職中に諸般の問題行動があったことが発覚した。他方で、この会社には役員退職慰労金規程が存在したことから、役員退職慰労金の支給をする必要があるのかという相談を受けた。
争点
特になし。
解決内容
役員退職慰労金規程が存在する場合であっても、当該規程に従って支払うべき法的な義務は存在しない。裁判例上、当該規程は、株主総会において、役員退職慰労金の支給額の決定を、取締役会に一任する旨の決議がなされることを条件として、はじめて適用されるものであり、当該株主総会決議がない場合には、当該規程に基づく役員退職慰労金の支給義務が発生しないとされている。そのため、この取締役の遺族に対して、役員退職慰労金規程に従って算定した金額を支払う必要は、必ずしも存在しないと助言を行った。
弁護士の所感
会社と対立する状態にある取締役が辞任する場合に、役員退職慰労金規程に基づく役員退職慰労金を支払う義務があるのかという点は、実務上、問題になる論点であるが、規定があるため支給せざるを得ないと誤解しているケースが多い。会社法の知識は、専門家である弁護士に確認することが早く確実であると感じる例であった。