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雇用継続を希望していたにもかかわらず、いわゆる雇止めで雇用契約が更新されなかった労働者が雇用継続と賃金等の請求を行った事案

労務問題その他の業務

相談内容

定年退職後、1年間の有期雇用で嘱託職員として働いていた相談者は、1年間の期間満了をもって雇い止めに遭った。しかし、相談者は、期間満了後も継続しての雇用を希望していたため、雇用継続の交渉依頼で弁護士に相談するに至った。
なお、本件は交渉を経て訴訟提起をしているが、訴えの内容としては、従業員としての地位確認と、雇い止め後の賃金及び遅延損害金の支払いを請求したものである。

                   

争点

1旧高齢者雇用安定法9条2項に基づいて、会社側が定めている雇用継続の要件(65歳まで雇用を継続するための要件)は、「定年前2年間の人事考課の結果が平均以上である」というもの(以下、「本件規定」という)であった。そのことから、本件相談者の定年前2年間の成績が平均以上であったか否か。
2そもそも相手方(会社側)において「人事考課制度」の運用があったのか。
3相手方に人事考課制度が存在しなかった場合、たとえ相談者の人事考課の結果が平均未満であったとしても、この人事考課は客観的な尺度に基づいたものではないので、本件基準を理由に雇用契約更新を拒否することは、権利濫用ではないか。

                   

解決内容

                   

訴え提起前の任意交渉の段階で相手方に人事考課制度が存在しないのではないかという疑念を抱いていたこともあり、まず、人事考課制度があったのかについて精査をしたところ、相手方の各出張所の所長より、人事考課という制度の存在そのものを知らないこと、及び部下の勤務成績をつけて上司に報告する慣例もないという供述を得ることができた。これらの供述を証拠化し、訴えの提起と同時に裁判所に提出していたため、その時点で本件裁判の勝敗は粗方きまっているようなものだったが、相手方が当方からの提案を拒否したため、判決の直前まで訴訟手続きは進行した。
しかし、相手方敗訴の心証が裁判所より開示されたこともあり、初めの段階で当方が請求していた金額(解決金として1年分の賃金相当額)の2倍の額を支払ってもらうという内容で和解が成立した。
4. 弁護士の所感
本件は、労働者側の代理人として対応した事件で、内容としては労使紛争に関するものでした。
初期の段階では任意で交渉をしていましたが、相手方は相談者の能力や勤務態度を非難するばかりで、雇用継続は拒否し、和解金支払いによる解決に至っては、到底受け容れられるものではないわずかな金額を提示するのみで、実質、解決金の支払いも拒絶したようなものでした。そのため、訴訟提起に踏み切りました。
今回の事件の一番のポイントは初動対応です。本件訴訟における最も強力な証拠は、相手方の各出張所所長複数名から得た「会社に人事考課制度といったものはない」と記載されたメールです。訴訟提起後は、被告である会社側に訴状が届くため警戒心が働きます。そうなると、このような証拠を入手することが難しくなります。相手方の危機感が希薄なうちに、重要な鍵となる証拠を得られたからこそ、本件訴訟を良い結果で終わらせることができたのだと考えています。
また、今回、判決直前まで訴訟は進行しましたが、判決をとらずに和解という形を選んだのには理由があります。それは、本件のきっかけとなった雇い止めを受けた後、相談者は職業安定所より失業保険の支給を受けていたため、勝訴判決を得た場合、受給した失業保険を即時返還する必要が生じ、それがクライアントにとってデメリットになると判断したからです。
このような事情からも、本件は良い解決であったと思います。

                   

弁護士の所感

                   

本件のポイントは、初動対応の点にありました。
すなわち、本件訴訟のもっとも強力な証拠は、相手方企業の出張所長複数からの「相手方企業に人事考課制度などない」との供述を記録したメールなのですが、こうした証拠は、訴訟を起こした後では、相手方も警戒し獲得することが困難となります。
相手方企業やその営業所長が油断している時点で、キーになる証拠を獲得できた点が、本件を良い形で解決に導くことができたポイントだったと思います。

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