工事費用の支払いを拒む発注業者に対し、工事費用の支払いを訴訟により請求した事例
相談内容
相手方となる発注業者との間でゼネコンとして請負契約を締結し、鉄筋コンクリート製の共同住宅を建築した。そもそも本案件は、他社が注文を受けて基礎となる工事を行っていた。しかし、別会社と発注者との間でトラブルが発生したことにより、残りの工事を引き継いだものであった。
予算が限られた現場であり、最初は施工主も「予算内で工事が完了できるように自分も協力をするのでお願いします」と謙虚な態度だったが、請負契約締結後には協力は疎か、自ら現場に立ち入っては、正規の下請け業者であるかのように請求書を送ってきた。
工事完了のため請求書に従って支払いを行っていたが、建物完成後における完成金の支払いを拒否したので、発注業者には鍵を渡さなかった。
発注業者は、鍵の入れ替えを別の業者に依頼し、建物の保存登記を勝手に行ったうえで、その利用を始めた。完成金の未払い分を請求したい。
争点
請負契約締結により合意された元請けの工事範囲。
解決内容
未払代金となっていた金額の9割以上を認容する判決を獲得するこができた。
弁護士の所感
本案件は、4年以上もの長期間にわたる訴訟となりました。重要となる争点は、請負契約締結により合意された元請けの工事範囲がどの範囲までかということであり、普通は問題とならない部分だと思います。
しかし、本案件は「引継いだ工事だったこと」と、「発注業者側から予算内での工事完了に伴う自身の協力を申し出たうえでの依頼だったこと」という2点の特殊性がありました。
相談者はその2点を考慮し、予算範囲内での工事完了のために、共同住宅本体の附属物件を建設対象から除外しましたが、これを発注業者も了承していたとの根拠となる直接的な証拠がないという事案です。
建築の専門訴訟であり、直接的な証拠が無いうえに、現象を理解するために必要となる資料は膨大なものであり、多くの労力を費やした事件ではありましたが、判決はこちらの意に沿うものとなりました。