50代女性のための離婚相談
目次
1. 50代の女性が離婚を検討するよくある理由
弊所が50代女性から離婚のご相談をお受けしている事案では、夫による明確な不貞やDVなどはないが、性格の不一致としか表現できないものの、長年の言動が積もり重なり我慢できなくなったケースや、子も独立して老後を意識したときに老後の長い時間を夫ともには生きてはいけないと考えたというケースは多いです。
そのような場合によくご質問されることとして、夫が離婚を拒んだときに、そのような理由で離婚ができるのか、ということです。
確かに、それらのケースでは、夫が離婚を拒んだ場合に、明確な不貞やDVがあるケースに比べて多少の時間がかかることが多いです。しかし、きちんとした手順を踏むことで、夫が離婚を拒んでも最終的には離婚することはできます。明確な不貞やDVといった事情があるケースではもちろん、そのような事情がなかったとしても離婚することをあきらめず、弁護士に離婚のご相談をいただければと思います。
2. 50代の女性が離婚を考える際に意識するべきこと
50代のご夫婦の場合、仮にお子様がいてもかなり大きくなっていることが多いため、あまり親権の争いが生じることはありません。
一方で、結婚期間が長く貯蓄なども多くなっていることから、財産分与に関しての争いが深刻となるケースが多いです。
財産分与に関しては、証拠の集め方や、主張や計算を間違えると、得られる金額が目減りしてしまい大きな損失につながってしまう可能性もあります。
早く離婚することばかりに目が行ってしまい、離婚条件について深く検討をしなければ、後から取り返しがつかないこともあります。また、財産分与の請求には、離婚から2年間という請求期限もあります。
3. 夫の預貯金・退職金について
預貯金の財産分与に関しては、独身時代の預貯金額は、必ず離婚時点(別居時点)の預貯金から控除しなければならないと考えられている方も多いです。しかし、婚姻期間が長いご夫婦の場合は必ずしもそのような考え方をとるとは限らず、独身時代の預貯金と婚姻後の収入が混在しており分けて考えることは困難であるとして、離婚時点(別居時点)の残高をそのまま分割の対象とすべきとして計算することも多いです。とりわけ、50代のご夫婦の場合には、そのように考えられるケースは多いと考えられます。
また、特に離婚時点でまだ退職していない場合、退職金が現実化していないこともあり、未受領の退職金も財産分与の対象になる資産であることを見逃して離婚しているケースも多いです。しかし、退職金規程が整備されているなど退職金支給の蓋然性が高い場合、一般的に離婚時点(別居時点)で自己都合退職した場合の退職金見込額が財産分与の対象になります。特に50代のご夫婦の場合にはその金額は大きくなると思われますので、離婚時にその主張を適切に行うことが重要です。
4. 持ち家について
持ち家については、単純に考えれば、売却して(住宅ローンが残っていた場合にはその返済後に)残った金額を半分に分けるということになるのですが、頭金等の取得費用を特有財産(独身時代の預貯金や親族からの援助金)で支払った場合や、別居後の住宅ローンを負担していた場合には分割の割合が同じではなくなることもありますし、売却はせずにどちらかが済み続ける場合にも特別の処理が必要になることもあります。そのようなケースでは財産分与の計算の処理が複雑になることが多いので、専門家へのご相談をお勧めします。
5. 生命保険の解約返戻金について
生命保険についても、積立型の生命保険の場合、仮に解約したときの解約返戻金額が財産となり、財産分与の対象になることは見逃されがちです。
年金代わりに生命保険料を積み立てているようなケースでは解約返戻金額も大きくなることが多いので、生命保険会社に、仮に離婚時点(別居時点)で解約した場合の解約返戻金額を問い合わせるなどして、しっかりと分与してもらうよう主張することが重要です。
6. 年金について
婚姻期間が長い50代の夫婦の場合、納めてきた年金も累積では大きくなっていることもあり、年金分割の手続きを怠ると、受給開始年齢以降の年金額が大きく変わる可能性が高いです。
そのため、年金分割についてもきちんと主張を行い、分割割合の合意をするなどの手続きをしておくことが重要です。また、年金分割についても、財産分与と同じく期限があります。