怒り方が異常な夫との離婚を考えはじめたら

異常なほどに怒る夫たち

①プライドが高く常に自分が正しいと思い込んでいる

何かとすぐ怒る夫の場合、その背景としては、夫のプライドの高さが原因になっている可能性があります。弊所の取り扱い案件で、すぐ怒る夫との離婚を考えている方から話を聞くと、夫が医師、上場企業の要職に就いている方など、世間的には高い地位にいることは多いです。
経歴的にプライドが高いことからくる「自分は正しい」という心理が、家庭内での態度に現れている節のあるケースは多いです。


②仕事などのストレスが溜まっている

上記のように夫の社会的地位が高いようなケースのほかには、仕事などの人間関係がうまくいっていないなどのストレスを家庭でぶつけていると思われるケースも散見されます。以外と男性は繊細なケースがあるので、何か大きく変わったことがなかったか、振り返ってみてください。

妻にだけ強くあたる

家庭の外では人当たりがよいが家庭内ではすぐキレる夫の場合、心の中では妻を見下しており、怒りによって妻をコントロールしたい心理があるのではないかと思われるケースも多いです。自分が怒れば妻は自分の要望を叶えてくれる、自分の望む通りに妻が動くと思っている可能性もあります。
怒り(の素振り)により妻をコントロールしようとすることは、DVのなかの「モラルハラスメント(精神的DV)」に該当する可能性がありますが、離婚の話のなかで、証拠がないモラハラ的な言動について自認する方はいませんので、口頭でのモラハラの場合は録音を録る、メールやLINEでのモラハラは消去しないように気を付ける、などすることが重要です。口頭での録音の場合、わざと相手方をあおったり、怒らせるようなことを言って録音を録ろうとする行為は止めた方がいいです。その場合、相手方も、録音での発言は言わされたものだという反論をしてき、裁判の際に証拠として提出しても信用性がなくなることがあるためです


また、妻を見下し、いわば所有物のように扱うパターンのモラハラ夫の場合、相談相手の男性を「不貞相手」と邪推し、その男性相手に「不貞の慰謝料請求」をしてくることがあり、第三者にモラハラが飛び火する事例もあります。

怒り方が異常な夫との離婚を考えたら

モラハラないし精神的DVと、いわゆる性格の不一致の境界線はかなり微妙であり、こちらがいかに夫の精神的DVを事細かに主張しようと、証拠がないものについて、裁判所は「ない」ものと扱います。
その結果、「法律上の離婚事由がない」として、離婚まで若干長めの時間を要することがあります。
法律上の離婚原因は、不貞、悪意の遺棄、3年以上の所在不明などの所定の例示事由に加え、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」というものがあります。相手方が協議ないし調停での離婚に応じようとしない場合は、離婚を求める側としては、相手方のモラハラないし精神的DVがこの「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するということを主張立証する必要があります。


裁判で精神的虐待により離婚が命じられた事例としては、「昼夜逆転生活をしていた夫が、連日のように午前3時から5時ごろになると妻に食事を作ることを要求し、すぐに従わないと怒りを爆発させ、テーブルを叩いたり床を蹴ったりした、朦朧状態で妻が座っていると『顔を洗ってこい』などと言いながらテーブルを叩き妻を眠らせず、午前6時頃まで夫の世話をすることを要求した」事例(東京地裁平成17年3月15日)、「夫婦間で意見が対立したときはことごとく大声を上げて自分の言い分のみを通してきた」事例(東京地裁平成16年9月28日)、「飲酒のうえ些細なことで怒り出し『誰に食わしてもらってるんや』など威圧的な態度を示し、子が勉強しないことに腹を立てて子を激しくしかり、妻がその怒りを鎮めるために土下座して夫に謝ることもあった」事例(神戸家裁伊丹支部平成24年12月20日)などがあります。
なお、仮にモラハラないし精神的DVが「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たらなければ相手方が離婚に応じてくれない限り離婚できない、ということはありません。


モラハラや精神的DVが「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という立証ができなくても、不仲による長期間の別居期間がある場合はそれ自体が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」になります。
そのため、相手方が離婚に応じてくれない可能性が高く、モラルハラスメントないし精神的DVの立証にも不安がある場合には、最終的にはこの長期間の別居という事由で離婚にまで至れるよう、早期に別居には踏み切っておくことが必要です。まずは別居した上で別居期間を重ねつつ、協議、調停で離婚の合意を得るよう試み、離婚の合意を得ることができなければある程度別居期間が長くなったところで離婚訴訟を提起し、婚姻時の言動、別居期間を総合的に考慮してもらい離婚判決を得ることを目指す、という方法が一般的な方法です。
別居期間については、一説では、どちらかが不貞をしたというような事案を除けば、3~4年を基本原則とし、夫婦不和の類型的な事情に応じて、プラスマイナス1年程度が目安になる、とされています。とはいえ、弊所の取扱事例では、別居期間1年半ほどで裁判離婚が命じられた事案もありますので、別居期間が短期間だからといってあきらめずに離婚を求めるのがいいです。

精神的DVに対する慰謝料を取りたい場合

精神的DVに対する慰謝料を取ろうとする場合、なおさら証拠の有無が非常に重要になります。
メールやLINEでモラハラがなされている場合は消去しないよう気を付けてさえいればいいのですが、モラハラが口頭である場合には、録音など積極的に証拠収集をしておく必要があります。また、裁判で、いわゆる証人の証言の証拠価値は低いので、重要なものは物証です。
どのような証拠を、どの程度収集しておけばよいのかについては、弁護士であればノウハウの蓄積がありますので、同居中の証拠収集段階からご相談をいただければ、有用なアドバイスができるかと思われます。
また、妻に対して異常に怒る夫と同居をしたまま対等に離婚することは困難ですので、まずは何よりも別居をしなければなりません。その際、別居に承諾をしてくれる可能性は低いでしょうから、別居予定日を水面下で設定し、夫には気づかれないように別居に踏み切ることが肝要です。別居の準備のノウハウもありますので、事前にご相談いただければ多くのアドバイスをすることができます。

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