裁判離婚とは
裁判離婚とは?
裁判離婚とは、その名の通りで、裁判によって離婚することです。裁判なので、原則として公開の法廷で行われます。
家庭裁判所の調停を経ないと離婚訴訟を起こすことができないと法律で決められています。当事者間で十分話し合ってからでないと、法廷での手続きを行うことは許されないのです。これを、「調停前置主義」といいます。
離婚の裁判は原則として夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所に訴えを起こします。民事裁判では、訴える側を「原告」、訴えられる側を「被告」と呼びます。
先ほど裁判は公開の法廷で行われるという話をしましたが、自己の私生活上の重大な秘密にかかわることについて尋問(裁判官、相手方、本人の弁護人からの質問)を受ける場合、その人が公開の法廷で陳述することで、社会生活に著しい支障をきたす場合には、裁判所の判断でその事項の裁判について公開を停止することができます。
裁判離婚に必要な5つの離婚原因
裁判離婚が認められるためには、民法による5つの離婚原因を証明する必要があります。これができなければ、裁判上の離婚は認められません。
民法によって、一定の事由がある場合には裁判によって離婚できると定められています。この事由を法定離婚事由といいます。そして民法770条1項では次の5つを離婚事由としています。
もっとも、重要なのは、これらの原因が相手方にあることが必要です。これらの原因をつくってしまった側、たとえば不貞をした側からの離婚請求を認めたのでは、社会倫理に反します。
こうした法定離婚事由を自らつくってしまった配偶者は有責配偶者と呼ばれ、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められず、厳しい条件のもとで例外的にしか認められないとされています。
1. 不貞行為により離婚できるのはどのような場合?
不貞行為とは
民法にいう不貞行為とは、配偶者があるものが、自由意思で配偶者以外の異性と性的関係を持つことを言います。
したがって、単にデートをしただけ、等のプラトニックな関係であれば不貞行為ではありませんから、世間一般にいう不倫より限定的な場面を指すといえるでしょう(しかしこのような場合でも、程度等によっては後述する「婚姻を継続し難い重大な事由」とされる可能性はあります)。
不貞行為により離婚できる場合とは
そして、不貞行為により離婚できる場合とは、このような不貞行為によって婚姻関係が破壊されたといえる場合、つまり、不貞関係と婚姻関係の破綻に因果関係がある場合です。したがって、既に別の原因で婚姻関係が破綻していた後に、性的関係があったとしても、これによって婚姻関係が破壊されたわけではないので、770条1項1号にいう不貞行為にあたらず離婚はできないということになります。
2. 悪意の遺棄により離婚できるのはどのような場合?
悪意の遺棄とは
悪意の遺棄とは、配偶者が正当な理由なく、他方の配偶者との同居を拒む、協力しない、他方配偶者と同一程度の生活を保障してくれないという場合です。夫婦は同居協力扶助義務という義務を負っています(民法752条)がこの義務を正当な理由なく果たさないのが悪意の遺棄です。
具体的には、①理由なく同居を拒む、②生活費を渡さない、③他方配偶者を虐げ家から追い出す等が考えられます。いずれも「正当な理由なく」というところが重要です。したがって、仕事の関係で単身赴任する必要があり別居せざるを得ない、病気で働けないために生活費を渡せないといった場合は悪意の遺棄にはならないでしょう。
3. 3年以上の生死不明で離婚できるのはどのような場合?
生死不明とは
相手方配偶者が、最後の消息があったときから3年以上生死不明である場合には離婚ができます。
行方不明でも、生存していることが分かっている場合には生死不明には当たりません。また、単に連絡を取らないから消息が分からないというのでは、生死不明とは認められません。警察に捜索願を出して捜査をしてもらう、戸籍を追うなど手を尽くしても見つからなかったということが求められます。
失踪宣告の制度を利用するのも有効な手段
また、失踪宣告の制度を利用するのも有効な手段です。失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないときの「普通失踪」と、戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後その生死が1年間明らかでないときの「危難失踪」の2種類があり、これらの場合は、家庭裁判所は、申立てにより、失踪宣告をすることができます。
失踪宣告を利用するメリットは、配偶者の財産一切を相続することができる点です。お子様がいるので、配偶者の財産は少しでももらいたいというような場合には失踪宣告の制度を利用することも検討するといいでしょう。
4. 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
回復の見込みがないことが必要
夫婦は同居協力扶助義務を追っていますが、相手方が強度の精神病に罹ったような場合こそかかる義務を果たすべき時であるということができます。しかし、夫婦関係の基礎は精神的なつながりですから、精神病によってこれが失われ、しかも回復の見込みがない時まで他方配偶者を形骸化した婚姻関係に拘束するのは酷です。
したがって、民法は相手方が強度の精神病に罹り、回復の見込みがない場合には離婚できるものとしています。回復の見込みがないかは、精神科医の診断を参考に、最終的には裁判官が認定します。
さらに具体的方途を尽くす必要がある
もっとも相手方が、強度の精神病に罹り、回復の見込みがなければすぐ離婚できるわけではありません。判例は、「夫婦の一方が不治の精神病にかかっている場合でも、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活などについて、できる限りの具体的方途を講じ、ある程度において前途にその方途の見込みのついたうえでなければ、離婚の請求は許されない」としています。
ちなみに、「方途」とは、手段や方法、てだてのことをいいます。すなわち、精神病になってしまった配偶者の離婚後の生活に目途を立てなければ離婚できないとされているのです。
5. 婚姻を継続し難い重大な事由で離婚できる場合とは?
婚姻を継続し難い重大な事由とは
婚姻を継続し難い重大な事由とは、1号から4号までの事由に限らず、夫婦関係を修復不能なほどに破綻させ、円満な夫婦生活の継続が困難とするような事由です。個々具体的なケースごとに判断されるものですから、あるケースでは婚姻を継続し難い重大な事由とされたことも、違うケースではそうではないと判断されることもあり得ます。
婚姻を継続し難い重大な事由の例
過去の裁判例では、次のような事情が婚姻を継続し難い重大な事由であると判断されたことがあります。
①長期間の別居、②ドメスティックバイオレンス(DV)、③モラルハラスメント、④性の不一致、⑤アルコール中毒、⑥薬物依存、⑦過度な宗教活動、⑧犯罪行為にともなう服役、⑨過渡の浪費
もっとも、前述の通り、どのようなケースでもこれらがあれば婚姻を継続し難い重大な事由があるということにはならないという点は注意が必要です。当該夫婦の全ての状況に照らして、ある事柄が婚姻を継続し難い重大な事由に当たるのかを判断するためです。
よく「性格の不一致」で離婚をしたいと相談される方がいらっしゃいますが、単に「性格の不一致」というだけでは婚姻を継続し難い重大な事由があることにはならず、いかにかかる事由があると認められるだけの個別具体的な事実を証明できるかが重要だといえます。
まとめ
以上のように、相手方が離婚に全く応じなくても裁判まで持ち込めば離婚できる可能性はあります。どうしても離婚したい場合、ご自身が離婚したい理由が法定離婚事由に該当するかどうか、まずは弁護士に相談ください。