弁護士コラム

子の引渡しについての民事執行法改正案

子の引渡しについての民事執行法改正案

2月19日、政府が、民事執行法改正案を閣議決定しました。改正案はいくつか提案されましたが、中でも注目を浴びたのが、離婚に伴う子どもの引き渡し手続きを明確化した改正案でした。

これまでの子どもの引き渡し方法

これまで、子の引渡しの強制執行については、明文がありませんでした。しかし、動産(いわゆる「物」です)の規定を類推適用して、強制執行が行われていました。

その際は、「執行官」という裁判所の職員が、子どもを監護している親(「監護親」といいます)から、直接、子どもを取り上げるという方法(「直接強制」といいます)を取っていました。子どもに意思能力がない場合など、子どもの年齢や発育状況に合わせて、監護親と子どもの立場が、物に対する支配関係と同一視できる場合に行えると考えられていることが多いようです。

また、「直接強制」と対になる制度として「間接強制」というものがあります。これは、「●日以内に子どもを引き渡さなければ、一日あたり〇万円を支払え」ということを命じることによって、間接的に子どもの引渡しを促す方法です。

今回の改正案で変更となること

しかし、今回の改正案では、直接強制について、「裁判所に引き渡しを命じられた親が現場にいなくても、引き取る側の親がいれば、執行官が強制的に引き渡せる」としました。

従来は、監護親がいないときは、子どもを連れ帰ることができなかったにもかかわらず、今回の改正案では、家に子どものみしかいない場合にも、子どもを連れ帰ることができるようになるということです。

これまでは、子どもの年齢によって直接強制ができるか否か判断されていましたが、法改正により、新たに子どもの引渡しについて定められるとなると、従来の判断要素が妥当するかは未だ不明確です。

もっとも、改正案によって、強制執行を受ける子どもにとっては、良い影響があると思われます

監護親から、強制的に取り上げられるということは、子どもにとって非常に精神的負担の大きいものでした。監護親がいない状況での引渡しを行うことができるようになると、子どもの監護親から引き離される寂しさや、申し訳なさ、執行官への恐怖感などを軽減できる効果が見込まれます。

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