弁護士コラム
共同親権につき、最高裁は判断せず、上告棄却
2019.03.06
40代男性が子どもの共同親権を求めて上告したところ、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は2月28日、男性の上告を棄却する決定を出しました。
「共同親権」とはいったい何なのか?
その名の通り、父母どちらにも親権があるということです。夫婦が婚姻している間は、もちろん父母どちらにも親権があります。しかし、夫婦が離婚してしまうと、親権者をどちらか一方に決めなければなりません。これが「単独親権」です。
民法にも、「離婚する際には父母のどちらか一方を親権者と決めなければならない」旨規定されていますし、離婚届にも、親権者の記載欄があり、記入がないと受理してもらえません。
どうして、単独親権が定められているのかについては、離婚した夫婦が協力して親権を行使することが期待できないとか、親権者をどちらかに定めないと子どもが不安定な立場に置かれてしまうとか、戦前の家父長制の名残であるとか、様々なことが言われています。
今回の裁判で主張された内容とは?
今回の裁判で、男性の代理人である作花知志弁護士は、離婚した両親間で「合理的な理由のない差別的取り扱いを行うもの」として、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反、無効であると主張しました。さらに、家庭生活における「両性の本質的平等」を定めた憲法24条2項にも違反する旨主張しました。
憲法14条1項は、以下のように定めています。
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」
まず、14条1項の「法の下」とは、法適用の平等のみならず、法内容の平等も含まれると考えられています。さらに、各人の事実上の差異を無視した絶対的平等はかえって不平等になるので、「平等」とは、合理的区別を許す相対的平等をいうと考えられています。
作花弁護士は、離婚した両親のいずれか一方を親権者と定めることは、「合理的区別」ではないため、憲法に違反すると主張しているのです。
また、憲法24条2項は、以下のように定めています。
「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」
判決全文を読んでみないと分からない点もありますが、おそらく、母(女性)、父(男性)のいずれかに親権者を定めなければならにということが、不平等であるとの主張だと考えます。
しかし、裁判所は、単独親権が違憲かどうか判断することなく、上告を棄却しました。
もし「共同親権」となった場合はどうなる?
では、仮に、民法が改正され、共同親権となった場合、どのようになるのでしょうか。推測にしかすぎませんが、私は、あまり、現状と変わらないのではないか、と考えます。
夫婦は離婚したら別居するのが通常ですから、共同親権とは言えど、子どもがどちらの家で生活するのか決めなければなりません。そうなれば、面会交流についても定める必要がありますし、養育費をどちらがどれだけ負担するのかも決めるべきでしょう。
もちろん、離婚をしても父母が協力して子育てを行っている家庭もありますし、中には離婚後も同居している方々もいらっしゃいます。そのような方にとっては、共同親権を持つことによって、子育てが円滑に進むこととなるでしょう。
しかし、そのような方々はレアケースなのではないでしょうか。婚姻関係が破綻し、互いに顔もあわせたくない、というような父母に共同親権を与えたら、子どもに関する争いが、いつまでも終わらないのではないか、子どもが苦しい思いをするのではないかと心配です。
私は、共同親権によって夫婦が協力して子育てをして行くというのは、非常に理想的な制度だと思います。しかし、現実問題として、うまくいくのか、疑念が残ります。
いずれにせよ、親権、監護権、面会交流に関する問題は、法改正の可能性を含む難しい問題です。これらについてお悩みの方は一度、当事務所にご相談下さい。